2016 年 45 巻 p. 39-49
地域包括ケアが推進されるなか,特別養護老人ホーム(特養)の看取りへの取り組みが増えている.しかし医師,看護師など医療職の人材不足に悩む医療過疎地域では,特養での看取りが困難な場合がある.宮城県登米市もそうした地域のひとつである.そこで,登米市の地域密着型特養のケアの当事者が,看取りの阻害要因についていかなる認識をもっているかを明らかにするため,聞き取り調査を実施した.聞き取りは,個々の施設ごとの体制や現状,取り組み,看取りの阻害要因として認識している事柄に関するものである.調査から,医療過疎地域や登米市の固有の事情と複合したかたちで,特養の看取りの阻害要因が認識されていたことが明らかになった.今後は看取りのケアを可能にする普遍的な要因の検討に加えて,地域の文脈や個々の特養が置かれた状況を視野に入れたアプローチが,地方における特養の看取りを研究する上で重要となろう.