2017 年 46 巻 p. 127-138
本稿の目的は,中学3年生とその母親を対象とした社会調査データを用いて,(1)中学生を含む有子世帯が相対的貧困に陥る社会経済的要因,(2)相対的貧困世帯と子どもの教育期待(将来の到達希望学歴)の関連とそのメカニズムについて検討することである.
分析の結果,得られた知見は以下のとおりである.第1に,社会階層・家族的要因として,低学歴層,世帯主が非正規雇用,子ども数が多い,母子世帯であることが有子世帯の貧困リスクを有意に高める独自効果を持つ.そして,これらの諸要因は母親15歳時の家庭の暮らし向きと現在の貧困状態の関連――貧困の世代間連鎖――を十分に説明していた.第2に,相対的貧困状態にある世帯に所属する子どもは,非貧困群と比べて高等教育への進学期待が相対的に低い傾向にあった.しかし,両者の関連は相対的貧困世帯の人的資本投資の寡少や経済的負担感を重視する経済的剥奪仮説(投資論仮説)のみでは十分に説明することができず,他の媒介メカニズムを検証する必要性が示唆された.