社会学年報
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特集 「大震災被災地における地域社会の再編」
福島県内の原発避難者向け復興公営住宅におけるコミュニティ形成とその課題
高木 竜輔
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2018 年 47 巻 p. 11-

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抄録

 福島第一原発事故から7年が経過し,避難指示の解除も進み,被災者の生活再建がある程度進んでいる.避難指示が解除された地域への住民帰還は進んでいないなか,避難先での住宅の自力再建ならびに復興公営住宅への入居という形で住宅の再建が進んでいる.長期避難・広域避難を前提とした原発避難者の住宅再建にはどのような課題があるのだろうか.

 本稿では2017年に実施した質問紙調査データを用いて,福島県内において建設された原発避難者向けの復興公営住宅入居者の抱える課題をコミュニティ形成という観点から明らかにする.調査の結果,(1)団地内の人間関係はある程度形成されているが,共助の関係までは十分できておらず,コミュニティ形成としては道半ばであること,(2)団地の流動性は比較的高く,団地入居者の高齢化がますます進行していくこと,(3)多くの団地入居者は住民票を避難先に異動することを考えていないこと,などが明らかとなった.これらを踏まえて,団地の高齢化が急速に進むなかでのコミュニティを長期にわたって維持していくことは困難であること.さらに団地入居者が避難元の住民票を持ち続けた上での支援体制の構築が早期に求められること,という二点の課題を示した.

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© 2018 東北社会学会
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