社会学年報
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特集Ⅱ「社会関係資本研究における新領域の開拓」
ソーシャル・キャピタル生成メカニズムの理論的分析
ミクロ・メゾ・マクロレベルの相互連関に着目して
佐藤 嘉倫
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2019 年 48 巻 p. 85-93

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抄録

 本稿の目的は,ソーシャル・キャピタルの生成メカニズムをミクロ・メゾ・マクロレベルの相互連関に着目して解明することである.ソーシャル・キャピタルをめぐっては,(1)ソーシャル・キャピタルの定義・概念化,(2)ソーシャル・キャピタルの生成過程の解明,(3)ソーシャル・キャピタルの効果の分析という大きく3つの問題群がある(Portes 1998).(1)と(3)については多くの研究が蓄積されてきたが,(2)の研究は(1)と(3)に関する研究ほど進んでいない.それは,Coleman(1988=2006)が指摘するように,ソーシャル・キャピタルが副産物であるという特性によるものである.本稿ではこのことを踏まえて,下位レベルのソーシャル・キャピタルを促進する上位レベルの仕組みを分析するとともに,下位レベルのソーシャル・キャピタルが上位レベルのソーシャル・キャピタルを促進する過程も同時に分析する.そして,すべてのレベルでソーシャル・キャピタルが高まる好循環過程とすべてのレベルでソーシャル・キャピタルが低下する悪循環過程があることを示すとともに,下位レベルのソーシャル・キャピタル向上のために上位レベルの仕組みが介入することの問題点も指摘する.

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© 2019 東北社会学会
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