社会学年報
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自由投稿論文
教育達成の分布格差と配分格差
逐次ロジット要因分解による教育格差変動分析
濱本 真一
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2021 年 50 巻 p. 81-93

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抄録

 本論では,教育達成過程の不平等に着目し,最終学歴などでとらえる教育達成の「分布」の不平等と,学校段階移行でとらえられる教育機会の「配分」の不平等を関連付けた分析を試みる.各学校段階移行の成否に対する階層差で得られる配分格差と,配分格差の重みづけ和で示される学歴分布の階層間格差を明確に分離したRobert D. Mareのアプローチ以降,逐次ロジットモデルによる教育機会格差の把握が主流になった.その後Maarten Buisが配分格差の蓄積として分布格差との関連をとらえる手法を提案した.本論ではBuisの枠組みを用いて,親の教育的背景による子供世代の学歴分布の格差が,学校段階移行のどの時点に強く影響を受けているのかを検討する.分析の結果,親の学歴の影響力は,戦後世代で一貫して,高等教育段階,特に4年制大学に進学するか否かの確率に強く影響していた.教育達成の分布格差に対する親学歴の影響はほぼ変化していない一方で,大学進学段階の移行に対する効果は増加傾向にあり,4年制大学に進学するか否かの格差がますます学歴分布格差の中で大きな位置を占めるようになる.ここから,教育格差の発生が18歳時に集約される構造が見て取れる.

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© 2021 東北社会学会
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