2023 年 52 巻 p. 31-43
「持続可能性」は現代の共通キーワードになりつつあるといえるだろう.他方,食・農をめぐるディスコースはその他にも多岐にわたって展開されてきた.その一つが「食へのアクセス」問題といえる.本稿では近年の国際情勢および国内外の食・農に関わる諸課題を通して,食を受け継ぎ,食が受け継ぐ〈あいだ〉の様相に着目した.その際,歴史研究の蓄積にも学びながら,空間-時間それぞれの観点を通して食が受け継がれる〈あいだ〉の諸相を振りかえった.
現代においては「子ども食堂」やフードバンクといった,市場流通とは異なる新たな食のチャネルも現れており,それらに関わるアクターや食の受け継がれ方も多様化している.「農」の領域においても農的営みに参加するアクターの裾野が広がっており,「生産(者)」と「消費(者)」の〈あいだ〉でその境界線が下がりつつあると見ることができるだろう.
近年生起しているこうした諸活動や食・農に関する議論の諸動向をふまえると,仮説的ではあるが,食を受け継ぎ,食が受け継ぐ〈あいだ〉のアクチュアリティには,持続的な食へと向かう推進力としての可能性を見出せるのではないだろうか.個々の論点を含め小稿に残された課題は数多いが,経験的現実と歴史に学びつつ,今後さらに子細に検討を進めたい.