2023 年 52 巻 p. 19-30
食と農の社会学,および消費社会研究では,有機野菜に関心を持つ消費者と市民的要素の結びつきが議論されている.本論では,この問題について,東京を中心とする首都圏で実施した3回の量的調査のデータを用いて検討を行った.より具体的には,①消費者の自律性/他律性についての問題,②消費者の社会的関心の高さについての問題,③消費者の分断と統合についての問題について検討を行った.
分析の結果,①消費者の有機野菜に対する関心は,消費者の自律的な要素と正の関連を持つ.②消費者の有機野菜に対する関心は,消費者の社会的な関心の高さと正の関連を持つ.③食の安全というリスクの存在が,一方では,消費者を分節化する可能性を持ち,他方では消費者を結びつける働きをもちうる,ということが明らかになった.
これらが示すのは,1つに,1970年頃から広がった有機農業運動においてそうであったのと同様に,現在の有機野菜に対する関心も,自律的な関心に基づき,かつ社会的問題に積極的に関わろうとする志向と関連しているという意味で,市民的な要素と結びついているということである.そして,さらに,リスクについての異なる認識や評価は,人々の間に摩擦をもたらす可能性を持つ一方で,人々をつなぐ働きも持ちうる,ということである.