抄録
原始・古代から近世にかけて広義ののり面緑化に使用されてきた植物について関連文献・資料から芝草等草地状植生, 竹・笹類, 草本性地被・野草類に大別して整理した。その結果, 芝草等については原始・古代といわれる時代の土葺住居の屋根部分に埋土種子の発芽による表層固定を狙ったとみられる措置が, そしてその後の古墳における墳丘についても, 同じく種子発芽による表層固定の可能性をうかがうことができた。また, 竹・笹類についても有史間もない時期に溜池の護岸への竹の人工植栽に始まり, 砂防竹林, 河川の護岸にマダケ, ハチク, 丈の短いものとして笹類, メダケ, クマザサなどが利用されていた。また, 城郭の礎である土塁におけるのり面についても傾斜を60度以上にする知恵として, 植栽による根張りを利用していた芝土居があった。この頃の芝とはノシバやコウライシバが利用されていた。そして草本性地被植物に関しては, 土塁の固定に利用されていた麦門冬がジャノヒゲであること, スズメノテッポウ, ジシバリなども河川の土の固定に利用されていた。また水路などにはマコモ, ガマ, ヨシ, スゲ, フトイ, ショウブ, ナキリスゲ, セキショウ, カキツバタなどが, より規模の大きい水路ではオギ, ヨシ, マコモ, ガマ, ショウブなどの水生植物が使われていたことがわかった。