2016 年 44 巻 2 号 p. 142-147
教育やスポーツ環境としての校庭芝生化の効果を実証するための基礎資料を得ることを目的として, 芝生グラウンドと土グラウンドの異なる2つの環境下に滞在時の生体の反応を生理学的な指標, 特に唾液アミラーゼ活性の測定や近赤外分光法 (NIRS) による脳血流の変化に着目して比較を試みた。
6名の被験者に対し2つのグラウンドの環境下でアイマスクを装着して視覚を遮断したのち芝生あるいは土表面を注視しながら安静状態で測定を行った。2つの条件下では心拍数と血圧はほぼ同値であり差がなかったが, 唾液アミラーゼ活性は芝生グラウンドでの値が土グラウンドに比べて低値を示した者が多く, 土グラウンドで測定された平均値と標準偏差は30.6±9.3 (KU/L) に対して芝生グラウンドでは20.7±3.3 (KU/L) であり, 芝生グラウンド滞在時の方が若干低い傾向がみられた (p=0.055) 。NIRSによる脳血流の比較において芝生グラウンドに滞在時の値の方が高い傾向があり, 特に前頭葉中央部 (9ch; p<0.05) と左側部 (13ch; p<0.10) では脳血流の積分値にその違いが観察された。