芝草研究
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研究論文
Physiological Integration of Nutrients in Interconnected Zoysia matrella Ramets Grown under Heterogeneous Nutrient Conditions
Souichirou SugiuraShimpei Takahashi
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 50 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

クローナル植物は匍匐茎 (地下茎を含む) を伸ばし無性生殖により新たな株 (ラメット) を成育させる特徴を有する。不均一な環境において, ラメット間の匍匐茎を介した水, 光合成産物, 栄養塩等の物質の移動 (生理的統合) はクローナル植物の環境ストレスの緩和に大変重要な役割を担っている。クローナル植物であるコウライシバ[Zoysia matrella (L.) Merr.]は, 貧栄養耐性を有すると言われている。本研究では, 本種の生理的統合とラメット間における施肥効果の一端を明らかにするため, 3つの実験ポットに匍匐茎が接続した状態でコウライシバを成育させた[基部ラメット (BR), 中間部ラメット (IR), および先端部ラメット (AR)]。また, IRから伸長したラメットになる前の匍匐茎を地面に接地させずに成育させた (SNTS) 。その後, ラメット間の匍匐茎を切断して物質の移動を制限したSevered区, ラメット間の匍匐茎を接続したままにしたIntact区を設定して, 49日間にわたりIRのみに液肥を施用し, BRおよびARには水道水を施用した。その結果, ARの乾燥重量は, すべての部位 (葉身部, 匍匐茎部, 根系部) で, Severed区よりIntact区で高く, 葉身部で2.1倍, 根系部で1.8倍有意に高かった。さらに, SNTSの匍匐茎部乾燥重量は, Severed区よりIntact区で2.2倍有意に高い値が示された。一方, BRではすべての部位においてSevered区, Intact区間で有意な差が示されなかった。これらの結果から, 本種の中間部ラメットにおける施肥効果は主に先端部のラメットや, 新たに伸長した匍匐茎部 (SNTS) の乾燥重量を増加させることが明らかとなった。また, ラメット全体 (BR, IR, AR) およびSNTSの乾燥重量の合計値では, 有意差は見られなかったものの (p=0.13), Severed区よりIntact区で1.5倍高い値が示されたことから, 本種の生理的統合は貧栄養耐性を高め, ラメット全体の成長に重要な環境ストレス応答であると考えられた。

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