芝草研究
Online ISSN : 1884-4022
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50 巻, 1 号
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研究論文
  • Souichirou Sugiura, Shimpei Takahashi
    2021 年 50 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス

    クローナル植物は匍匐茎 (地下茎を含む) を伸ばし無性生殖により新たな株 (ラメット) を成育させる特徴を有する。不均一な環境において, ラメット間の匍匐茎を介した水, 光合成産物, 栄養塩等の物質の移動 (生理的統合) はクローナル植物の環境ストレスの緩和に大変重要な役割を担っている。クローナル植物であるコウライシバ[Zoysia matrella (L.) Merr.]は, 貧栄養耐性を有すると言われている。本研究では, 本種の生理的統合とラメット間における施肥効果の一端を明らかにするため, 3つの実験ポットに匍匐茎が接続した状態でコウライシバを成育させた[基部ラメット (BR), 中間部ラメット (IR), および先端部ラメット (AR)]。また, IRから伸長したラメットになる前の匍匐茎を地面に接地させずに成育させた (SNTS) 。その後, ラメット間の匍匐茎を切断して物質の移動を制限したSevered区, ラメット間の匍匐茎を接続したままにしたIntact区を設定して, 49日間にわたりIRのみに液肥を施用し, BRおよびARには水道水を施用した。その結果, ARの乾燥重量は, すべての部位 (葉身部, 匍匐茎部, 根系部) で, Severed区よりIntact区で高く, 葉身部で2.1倍, 根系部で1.8倍有意に高かった。さらに, SNTSの匍匐茎部乾燥重量は, Severed区よりIntact区で2.2倍有意に高い値が示された。一方, BRではすべての部位においてSevered区, Intact区間で有意な差が示されなかった。これらの結果から, 本種の中間部ラメットにおける施肥効果は主に先端部のラメットや, 新たに伸長した匍匐茎部 (SNTS) の乾燥重量を増加させることが明らかとなった。また, ラメット全体 (BR, IR, AR) およびSNTSの乾燥重量の合計値では, 有意差は見られなかったものの (p=0.13), Severed区よりIntact区で1.5倍高い値が示されたことから, 本種の生理的統合は貧栄養耐性を高め, ラメット全体の成長に重要な環境ストレス応答であると考えられた。

短報
  • Sasuke Ogawa, Keita Shirahama, Takaya Nishizaki, Young-Sik Ham, Akihik ...
    2021 年 50 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は, 川崎の工業地域の土壌環境の下でのセイロンベンケイ (Kalanchoe pinnata), ヨモギ (Artemisia indica), アカザ (Chenopodium album var. centrorubrum) の鉛ファイトエクストラクション能力を明らかにすること及び, これらの植物の地上部における鉛の蓄積に影響を与える要因を突き止めることである。現場実験では, 1つの試験区当たりそれぞれ5個体のセイロンベンケイとヨモギを試験区B, C, Dの鉛汚染土壌で113日間栽培した。アカザは試験区Bの鉛汚染土壌で同じ期間栽培された。温室実験では, 川崎の試験区A, B, Eで採取された鉛汚染土壌を用いて, 温室内でこの3種類の植物を65日間栽培した。そして, ICP-MSを使用してこれらの植物の地上部の鉛集積量を測定した。現場実験の結果, 試験区B, C, Dのセイロンベンケイの地上部の平均鉛濃度はそれぞれ0.88 mg/kg, 2.16 mg/kg, 1.76 mg/kgであった。試験区B, C, Dのヨモギの地上部の平均鉛濃度はそれぞれ4.08 mg/kg, 5.56 mg/kg, 4.68 mg/kgであった。試験区Bのアカザの地上部の平均鉛濃度は4.17 mg/kgであった。試験区ごとに各植物の地上部の鉛濃度を比較した結果, ヨモギとアカザはセイロンベンケイよりも鉛を蓄積する能力が高いことが示された。また, 温室実験の結果, アカザの地上部における鉛濃度が比較的高いことが示唆された。

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