芝草研究
Online ISSN : 1884-4022
Print ISSN : 0285-8800
ISSN-L : 0285-8800
芝草害虫Hunting billbugのわが国への侵入
吉田 正義鍋島 英男
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 10 巻 1 号 p. 57-61

詳細
抄録

1) 1980年2月12日, 福岡カンツリークラブ和白コース (福岡市東区) と古賀ゴルフクラブ (福岡県粕屋郡) で芝草を加害するSphenophorus venatus vestitus Chittenden : Hunting billbug (シバオサゾウムシ) が発見された。
2) 沖縄県下のゴルフ場では1979年7月に発見され, 密度の高い所では1m2あたり18頭の成虫が発見されている。福岡地区では1977年にはすでにこの虫の存在が確認され, 多い所では1m2あたり30~50頭, 少ない所で10~20頭が採集された。
3) 現地ではコガネムシの幼虫と混同されていたようであるが, コガネムシは3対の胸脚があり, また腹部の後部の環節が丸く大きくなっているので, 区別することができる。
4) この虫はコガネムシ類より発生経過が早く, 6週間位で1世代を終了し, 年間2世代またはそれ以上発生するようである。
5) 福岡地区では主として成虫, 一部幼虫で越冬する。2月では幼虫は地表から5~6cm下の所に生息するが, 成虫は地表は浅く潜土しているので, これを捕食する渡り鳥のツグミがみられた。
6) 成虫も口器で植物体をかみくだき加害するが, 幼虫による地下部の被害の方が大きい。幼虫による被害の顕著になるのは夏の終りから秋にかけてである。被害を受けた芝草地は黄色に枯死し, 芝草の茎葉をもって, 引っ張ると芝草がもち上るようになる。
7) Bluegrass webworm, Rhodesgrasss cale, Hunting billbugのように多くの侵入害虫が発見されていることは, 他方では芝草の病害の原因となる菌類, 細菌, ウィルスやネマトーダ類などの侵入が予想されるので, 速やかにその研究対策が強く望まれる。

著者関連情報
© 日本芝草学会
前の記事 次の記事
feedback
Top