芝草研究
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リゾクトニアラージパッチに関する研究 (第6報)
―リゾクトニアラージパッチに対する殺菌剤散布後の病原菌の消長について―
小林 堅志
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1989 年 17 巻 2 号 p. 169-176

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抄録

1.この報告はラージパッチに殺菌剤を散布し, その後の病原菌の消長を調査し, さらに, 薬液量の多少と浸透剤の加用による殺菌剤の透過性, 並びに, 異る芝地への同一薬液量散布による効果の差について実験を行ったものである。
2.秋に発生した病斑に数種殺菌剤の慣行濃度液を散布したあと春まで, 刈取面から深さ1.5cmまでの茎葉部分を対象に, 経時的に病原菌の分離を行い消長を調査した。
その結果, 病原菌は散布当日から極端に減少するが, 皆無にはならず, そのままの状態で一定期間持続したのち再発生が見られた。
持続期間はトルクロホスメチルでは16週間以上あったが, TPN, メプロニル, イプロジオンでは8週間までであった。
慣行量の2倍を散布すると, トルクロホスメチル, TPN, メプロニルでは散布当日からさらに病原菌は減少し, 一部は皆無になるものがあったが, やはり一定期間の後再発生が見られた。殺菌剤の種類にもよるが持続期間も若干長くなった。なお, イプロジオンでは病原菌の減少も持続期間も慣行量と変らなかった。
さらに, 散布後の効果発現はいずれの殺菌剤とも散布3時間後であった。
3.さらに深さ1.5~3.5cmのほふく茎の部分を対象に, 慣行量のトルクロホスメチルは1回, TPNは2週間後にもう1回散布したあと病原菌の消長を調べたところ, 病原菌はいずれも期間中無処理区と同じような割合で検出された。
4.殺菌剤の芝地中への透過性を見るために, トルクロホスメチル, TPNの薬液量を増やして散布し, ほふく茎の部分とさらに深さ3.5~5.5cmの根の部分に生息する病原菌を対象に実験を行った。
その結果, ほふく茎の部分の病原菌はいずれの殺菌剤とも慣行量の8倍を入れても無処理区の半分ぐらいにしか減少しなかった。
また, 浸透性が強いといわれている市販の浸透剤を加用し, 通常の展着剤と透過力を比較したところ, いずれも透過力に差はなかった。
5.グリーンとフェアウエイにトルクロホスメチルの同じ量を散布したところ, ほふく茎に生存する病原菌に対してはグリーンよりもフェアウエイでの効果が弱かった。また, 薬量だけを2倍にするよりも薬液量を2倍にして散布する方が効果は高かった。

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