芝草研究
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芝生広場のアメニティ
半田 真理子
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1991 年 19 巻 2 号 p. 179-188

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抄録

1.緑のオープンスペースをめぐる動向
近年, 地球的規模での環境のあり方が問われ, 「自然と人間の共生」が未来に向けての重要な課題になっている。このような中で, わが国でも, 国際化, 情報化, 高齢化など国民生活を取り巻く経済社会の変化を背景に, 自然志向, 余暇志向, 健康志向などが高まり, 都市公園など緑のオープンスペースへのニーズが増大している。国においても都市公園等整備五箇年計画を策定するなど, 鋭意事業を推進しているところである。
2.芝生広場の特性
1) 芝生広場は, (1) 環境保全 (微気象の緩和, 飛砂の防止等) , (2) 修景 (空間の美化, 「緑の絨毯」の創出等) , (3) 感触改善 (快適なレクリエーション地の創出等) など多様な機能を有している。
2) 広がりのある「芝生広場」は通常, 活動するための空間であるが, 観賞するための空間として性格付けられる場合もある。また, 地域によっては, 大震火災時の避難地としての役割も担っている。
3) 芝生広場での活動は, 座る, 散策するといった「静的な行動」, 凧あげ, ハンカチ落としといった「遊び的な行動」, ボール蹴り, バドミントンといった「軽スポーツ的な行動」など, 多様である。また, イベントとして野外コンサート, 祭りなどが開催されることもある。芝生広場は, 状況に応じて柔軟な利用が可能な空間である。
4) アメニティのためには, 踏圧による芝生の損傷への対策などがまずは必要である。
3.今後の課題
芝生広場をめぐる課題の中から, 次の事項に焦点を絞って問題提起を行う。
(1) 風景づくりの探求を
わが国で芝生広場がっくられるようになって久しいが, 地形, 樹木, 灌木などを含む「風景」として捉えた場合, 必ずしも質の高いものであるとは言い切れない場合もあるのではないか。歴史のあるヨーロッパの風景式庭園においては, 「書き割り」 (舞台の背景として自然の風景などを描いたもの。Kulisse) の概念のもとに樹林を配し奥行きのある空間をつくっている例が見られる。より立体的に空間を把握し, 適確なスケール感をもって設計, 施工し魅力的な風景をつくる必要がある。
また, 花のある風景についても, そのあり方を検討する必要がある。
(2) 人にも生き物にもやさしい植栽を
専ら芝草が生育する端正な芝生広場だけではなく, ある程度の雑草も混じりあったラフな原っぱが求められるようになってきた。このような原っぱの場合でも原則として適宜刈り込みを行い, 一定の状態に保たなければならないが, 原っぱの周辺部など部分的には伸びるままにしておくのも良いだろう。芝草と雑草の地には野の花が咲き, 昆虫が棲みつくようになる。エコロジカル・ライフの波とともに, 「草苑」とも呼ぶべき空間が期待されている。
(3) 利用と景観の両立を
芝生広場においていかに「人の活動」と「美しい景観」を両立させ, 良好な状態を保っていくか。部分的に一定期間閉鎖するなど管理面での対応もあるが, 整備段階で土壌改良 (物理的, 化学的) , 排水など適切に対応する必要がある。

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