抄録
ゴルフ場のコウライグリーンでは, 春期の萌芽期にリゾクトニア性春はげ症とピシウム性春はげ症 (仮称) が発生する。前者については, すでに病因が解明され防除方法も確立されているが, 後者は病因, 防除方法とも未だ不明である。本研究では, 本症の主因を明らかにするとともに, 本症発生グリーンにおいて薬剤による防除試験を行い, 以下の知見をえた。
(1) 本症発生箇所からは5月から11月にかけてFusarium spp.が, 5月にはPythium spp.が高頻度に分離された。
(2) ノシバ子苗を用いた接種試験によると, 10℃または15℃下において強い病原性の認められたFusarium spp.はF. roseum LK.‘Acuminatum’およびF. niualeと同定された。また, Pythium graminicolaとP. vanterpooliiが15℃で強い病原性を示した。
(3) Fusarium spp.に有効なべノミル剤 (以下BE) , トリフルミゾール剤 (以下TR) およびPythium spp.に卓効の殺菌剤メタラキシル・ヒドロキシイソキサゾール混合剤 (以下MH) , ホセチル・クロロネブ混合剤 (以下FC) を用いて防除試験を行った。1988年から1990年にかけて4ヶ所で試験を行ったところ, 秋期のBE処理・春期MH処理, 秋期BE処理・春期MH・FC処理, 秋期BE処理で高い防除効果が認められた。秋期BE処理・春期BE処理および秋期MH処理・春期MH処理では完全な効果は認められなかった。秋期TR処理では春期に若干のパッチが出現した。
以上の結果より, 本症は休眠前後のF. roseum LK.‘Acuminatum’, F. nivaleおよび萌芽後のP. graminicola, P. vanterpooliiによる複合感染による病害であると結論された。