抄録
前報で報告した, 雪腐黒色小粒菌核病菌Typhula ishikariensisの菌叢進展を抑制する細菌A11株は, Pseudomonas fluorescensと同定された。本菌株の培養液から遠心, 濾過によって菌体を取り除いて調製した滅菌濾液にも菌叢進展抑制効果が認められたので, 濾液に含まれる抗菌性物質の同定を試みた。濾液から抗菌性成分を抽出してクロマト操作により精製し, スペクトル分析 (赤外吸収, 紫外吸収, MASS, 1H及び13C-NMR) により構造決定したところ, 抗菌性成分はフェナジンー1一カルボン酸であることが明らかになった。ソッド・カップテスト法により, フェナジン-1-カルボン酸がT.ishihariensisの菌叢進展抑制に重要な役割を果たしていることが明らかになった。