2001 年 30 巻 1 号 p. 5-11
日本芝に発生する葉枯性病害‘犬の足跡’の罹病部位から菌を分離すると通常の培養では胞子形成が認められない菌 (無胞子菌) が特異的に分離された。従来から病原菌と考えられてきたHelminthosporium属菌は分離されず, Curuularia属菌は C.geniculataおよびC.lunataが分離されたが, 健全部でも同程度分離され特異性は認められなかった。接種試験の結果, 分離菌の中で無胞子菌のみが唯一圃場の日本芝に強い病原性を示し, 自然発病に酷似した病徴を再現できた。また, 接種病斑部から接種に用いたのと同様の菌叢を呈する菌が高率に再分離された。これらの結果から, ‘犬の足跡’の発生には本研究で分離された“無胞子菌”が深く関与していることが示唆された。