芝草研究
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踏圧がヒメコウライシバ芝生の生育に与える影響について
輿水 肇飯塚 克身藤崎 健一郎
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1979 年 8 巻 1 号 p. 41-47

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抄録

公園における芝生地の運営と芝生の保守という管理の重要内容の中で, 特に芝生利用の程度と養生の関係についてとりあげ, それが芝生の状態に与える影響を実験的に解析することによって合理的な芝生管理の水準を求めるための基礎的な資料を得ようと試みた。
造成後のヒメコウライ芝生が過剰利用 (過踏圧) によって荒廃してゆく過程を追跡し, その際施肥による荒廃緩和と回復促進への効果を知ろうとするのが本報の具体的な目的である。踏圧回数を0, 20, 50, 100回/日とし, 施肥区, 無施肥区の両者について, その生育状態の変化を観察し, 踏圧処理後の回復について追跡した。その結果
1) 緑色芝生地 (緑葉) の部分の面積率が100%を保ったのは0回区 (施肥, 無施肥) と20回施肥区であり同無施肥区は80%でほぼ一定となり施肥の効果が認められた。
2) 50回区と100回区は緑葉の面積緑はほぼ同じ水準の10~20%まで低下したが, その低下の速度は100回区は50回区の倍の速さであり, 踏圧処理を停止して8月の生育期に休養期間を設けた100回区の方が回復がよく, これも施肥区の方がすぐれていた。
3) 芝生各部分の乾燥重の変化は, 踏圧処理前と処理後では0回区で増加するものの, 20回区ではほぼかわらず, 50回以上の踏圧ではいずれも減少していた。
4) 根部の重量は踏圧処理を行なったものはいずれも変化せず, 短期間の過踏圧では地下部より地上部に強い生育阻害が現われることが明らかにされた。造成後2カ月の養生期間を与えたものは, 100回の踏圧を加えても根部は無踏圧と同程度に生長し, その後の回復にも有利に作用した。
5) 土壌改良材の混合施用は, 過踏圧の場合ほとんど効果がなく, 土壌硬度の増大も地表面から5cm程度の深さまでの範囲にのみ現われた。
6) 過踏圧によって荒廃した芝生地でも芝生の生育が旺盛な時期に休養させれば, その後の再利用に応えられる程度にまで回復し, 施肥によってさらにその回復の程度と速さを増すことができる。
7) 生育期に過剰踏圧を与え, その上無施肥の場合は一年の休養期間を設けても回復はきわめて不良であった。

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