芝草研究
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芝草を加害する半翅類の害虫に関する研究I
スナコバネナガカメムシによる芝草の被害と生態
吉田 正義早川 隆弘廿日出 正美
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1979 年 8 巻 2 号 p. 129-135

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抄録

砂丘地に造成されたゴルフ場の芝草地において1977年11月~1978年12月の期間, スナコバネナガカメムシによる芝草の被害について調べるとともに, その生活史や発生経過などについて調査した。
(1) この虫による被害は砂土または砂壌土地帯の芝草地の南面した傾斜地のノシバに起こる。芝草の地下部の汁液が吸害されるため, 地上部の茎葉が枯れ, つづいて土壌が洗われて流出するため, 地下茎のみが繊維状に露出するようになる。このような被害は8月下旬頃から翌年の5月頃まで続き, その面積は次第に拡大されている。
(2) 成虫の雌雄の区別は腹部の生殖節の形状によりて行う。産卵数の平均値はこの実験では4.1粒であった。これは, 成虫をペトリー皿に入れて産卵させたため, 成虫が早いうちに死亡したためであろう。産卵期間は4.5日であった。
(3) 卵の長径と短径の平均値は, それぞれ0.92mm, 0.45mmであり, 吸水成長はみられない。卵期間は20°, 25℃および室温ではそれぞれ30.5日, 17.6日, 18.4日であった。ふ化率はいずれの場合も良好であった。
(4) 仔虫のふ化は6月から始まり, 9月まで続く。その間仔虫は次第に成長し, 5令を経て8月以降から新成虫が羽化し始める。越冬は, 主として成虫で行うが, 一部は仔虫でする個体もある。越冬した成虫は翌年の5月中旬頃から産卵を始めるものと推察される。

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