芝草研究
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コウライシバ春はげ症発生土壌における糸状菌相
小倉 寛典大久保 良一玉垣 憲爾
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1980 年 9 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

本報告は茨木カンツリークラブの西コース7番のフェアウエイにおいてコウライシバ春はげ症が常時発生する数地点での糸状菌相の変化を1975年より1977年にわたって調査したものである。
1.芝生土壌は畑土壌に比べて微生物数が少ないがとくに糸状菌および放線菌においてその傾向が顕著である。
2.発病地の残渣から検出される糸状菌数は健全地の残渣からの検出数と差は認められないが, 明らかに相の構成は異なり, 発病地の糸状菌相は単純化する。また, 過湿地は乾燥地よりも相は単純になり, 藻菌類が増加する。
3.罹病したシバの根部からはPythium, F.roseum, R.solani, F.oxysporum, Curvularia, Trichodermaが検出されるが, 前3者は秋期からシバを侵す。後3者は寄生性よりも腐生的性格が強い。
4.3に示す糸状菌は高温活性型であり, 低温条件下ではCurvularia>R.solani, Trichoderma, Fusarium>Pythiumの順に活性が低下する。
以上の結果より, 春はげ症を起こす糸状菌は強病原菌でなく, 弱病原性を有するPytlzium, F, roseum, R, solaniであり, シバの活性の低下する秋季より侵害が起こる。その場合, 侵害には複合菌群の存在が考えられ, 病原菌相互あるいは腐生力の強いCurvularia, F, oxysporum, Trichodermaなどの関係を検討する必要がある。

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