抄録
本稿では,1928年3月に東京府美術館で開催されたフランス国立リュクサンブール美術館収蔵品の展示について論じる。この展示は,エルマン・デルスニスが1922年から毎年開催していた仏蘭西現代美術展覧会の第7回展の一部として,フランスの政府関係組織が公式に協力して行われた。フランスの国立美術館が収蔵品を日本に初めて貸出した展示であり,日仏美術交流史上極めて重要であるが,その内容については不明な点が多い。また,この展示は,当時,主に美術団体展会場であった東京府美術館で催された外国美術館展である点に於いて,東京府美術館史の上でも重要である。本稿では,当時の東京府美術館設計図と使用規程,および展覧会図録や美術雑誌などに掲載された記述や写真をもとに,作家・作品の特定,展示の再構成を行い,展示の状況や,鑑賞支援の試みを明らかにする。