美術教育学研究
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マルティン・ブーバーの「関係」の概念による造形活動の人間的意義
藤本 優希
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2016 年 48 巻 1 号 p. 353-360

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抄録

ドイツの哲学者M.ブーバー(Martin Buber, 1878–1965)の「教育論」(1916)を手がかりに,知覚されたものと制作者との間の「関係」から,芸術行為の構造を明らかにする。ブーバーの主著「我と汝」(1913)では,〈われ-なんじ〉〈われ-それ〉という二つの「関係」の形式が示される。〈われ-なんじ〉とは,相互承認的な「関係」である。また〈われ-それ〉とは,対象を客観的に観察し利用する「関係」である。いずれの「関係」をもって造形活動にあたるかによって,造形活動がもたらす人間性への影響は異なる。「関係」の概念によって造形活動を論じることは,H.リードにも通じる「芸術による人間教育」という視座を導く。本論では,「関係」の概念を解き明かしながら,「教育論」で示される「創始者本能」と「結びつきの本能」という二つの概念を用い,造形活動の構造を考察することによって,造形活動の人間性への関連を論じることを目的とする。

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© 2016 大学美術教育学会
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