2016 年 48 巻 1 号 p. 393-399
本研究は,美術教育における「映像メディアによる表現」の意義と可能性を探ることを目的としている。その一環として,論者は子どもたちの映像作品制作支援や,制作した映画を映画館で上映する企画を6年程継続してきた。以来,出品作の中には震災をテーマに据えたものが毎年出品されている。また,その中には「PTSD(Post Traumatic Stress Disorder;心的外傷後ストレス障害)からPTG(Posttraumatic Growth;心的外傷後成長)へ」をスローガンとして映画制作に取り組んだ小学校の実践も含まれている。本論では,まず,アメリカを中心に研究が進んでいるPTGの知見を参照する。そしてPTGの心理過程に「映像メディアによる表現」がどのように関わっていくことが可能なのかについて考察する。特に,PTGにとって重要な概念である「レジリエンス」について先行研究から分析し,美術教育の方法論へつなげたい。