本研究は,生命を時代のコンセプトとして捉え,1980年代以降の現代日本の生命哲学に見られる生命論と,芸術文化のエコロジーの思潮から,自然観を基軸にした美術教育を構想しようとする一連の研究である。ここで扱う生命主義的自然観とは,その生命哲学を拠り所とした造語である。前研究では,自然環境との関係に見られる造形芸術の内容を,「環境との一体化」,「個の想像的世界のリアリティー化」,「環境の芸術化」,「生活の芸術化」,「社会的リアリティー化」,「社会的創造活動の芸術化」の6ステージから検討し,その自然観を構築する手段として芸術の直接的,包括的,統合的,想像的機能について考察した。本稿では,その6ステージを仮説とし,1997年~2015年に行った事例分析を基に生命をコアとした美術教育の内容を検討し具体的な実践事例から表現内容を位置づける。