美術教育学研究
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受験体験記から見た「文検図画科」の受験者像
亀澤 朋恵
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2017 年 49 巻 1 号 p. 129-136

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抄録

本論文は,「文検図画科」受験体験記から受験者の修学歴や受験動機,そして受験勉強の様子から図画教員志望者の実態を検証し,「文検図画科」受験者にとって「文検図画科」の意味づけを考察することである。受験体験記によれば,受験者は小学校教員で,修学歴は大部分が師範学校卒業であったが,小学校教員検定合格者や元画家志望者が少なからず含まれていたことが特徴的であった。絵が好きな者が多く,受験動機は絵を描き続けるために中等教員の資格を得ることであった。受験勉強は小学校教員の仕事と並行して行っていたが独学では合格が難しかったため,合格者の有志が「緑陰社」を設立し,受験者たちはそこで指導を受けることができた。同社では現役の検定委員が指導したが,他の教科と比較すると異例なことであった。受験体験記を勘案すると,受験者は「文検図画科」を絵を描く自由を得る契機として捉えていたようである。

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© 2017 大学美術教育学会
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