2021 年 53 巻 1 号 p. 1-8
「自己肯定感」を高めやすい図画工作科の学習活動の特性を生かして,作家や美術館,保護者,教職員との連携を通して,全校体制での取り組みを実施した。その結果,子どもの自己肯定感を高めることに効果がみられた。また,鑑賞の研修会に参加した教師は,鑑賞の魅力を体感し,自分の見方や考え方,感じ方が決して全てではないという当たり前のことにも改めて気づくことができた。これは,教師にとって,子どもを共感的にとらえたり,学習活動を不断に見直し,改善し,子どもと共に創造したりする上で重要な要因である。今回の研修事例が示すように作品を共にみて鑑賞をすることによって,美術が専門ではない教師でも鑑賞の魅力を味わい,多様な見方や感じ方を体感することができる。鑑賞活動は創造性のみならず新しい意味や見方,感じ方,自己肯定感をも育む魅力的な学習活動であることを示した。