美術教育学研究
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美的能力と主題把握法,作品構造の把握法,比較能力の関係をめぐって
―グスタフ・クリムト作『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I』の題材実践(中学2年生における場合)を通して―
立原 慶一
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2021 年 53 巻 1 号 p. 153-160

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抄録

本題材実践で生徒は作品を鑑賞して,どのような主題を把握するのか。そうした問いかけがなされた。ワークシートに現れた彼らの回答を分析することで,6類型が認められた。その中でも④不思議美は高回感受組の生徒によって,絵の主題と見なされた。高回感受者と主題の類型の関係を逆算すれば,④不思議美を主題として把握することが望ましく,作品鑑賞のあり方として高く評価されよう。作品の成り立ちを構造的に把握する力と美的能力は,正の相関関係にあることが分かった。作品を情意的に把握することを成就させるためには,ひたすら彼らの美的能力を高めることに話は尽きるのである。美的能力が高い者ほど,作品を美的に評価する切り口が多く自覚されるなど,作品比較のための卓越性を打ち立てられるのである。鑑賞教育で広くねらいとすべきなのが,本稿が定義する「美的能力」を育成することなのである。

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