2021 年 53 巻 1 号 p. 161-168
本論文では,教師が「遊び心」をもって行動することで,結果的に子どもの「学び」に良い影響を及ぼすことについて論じる。担任と同じ教室にいるだけで泣いてしまう特別支援学級のA児に対して,担任はいろんな対応を試したが,変化は見られなかった。しかし,担任が絵を描くという「遊び」を始めた時にA児は変容した。A児が,担任の「遊び心」に触れることで,変容していく様子を担任の記録をもとに考察を行った。その際,麻生武の「遊び」の理論を援用し,A児が「遊び」という「秘術」を学んでいくプロセスを明らかにした。これにより,教師が「遊び心」をもって関わるとき,子どもには,楽しく活動して良いという安心感と,楽しいことをやってみたいという好奇心を抱かせ,主体的な活動の展開につながる効果が期待できるという結論を得た。