本論文は,茶の湯における陶製道具の露胎の賞玩について,道具の使い手である茶人の立場から,その重要性と鑑賞の視点を明らかにすることを試みたものである。はじめに,茶書の分析を通して,茶人が露胎にどれほど関心を示していたのか整理した。次に,名物記や茶会記などを手掛かりとして土に関する内容を分析し,露胎の鑑賞の視点について調査を行った。調査の結果,亭主は点前の際にできる限り露胎部分に手を触れず,手の汗や脂を露胎につけないように心掛け,客は拝見の際に土をよく賞玩するように,という教えが多くの茶書で説かれていることが確認できた。これは,亭主・客ともに露胎へ高い関心があり,陶製道具において露胎が重要な鑑賞の視点の一つであることを示している。また,露胎の主な賞玩点は土色,土の粗さ,底のつくり,露胎範囲の四つであることが明らかとなった。