本稿は,中学校美術科における抽象絵画鑑賞に発見学習を取り入れる鑑賞教育方法の可能性を検証するものである。そこでは,ある作家が抽象絵画を制作するに至るまでの,作品の変遷を生徒に辿らせることで,作家の意図の発見を促すことができるのではないかと考えた。具体的には,モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」を鑑賞作品の中心に据え,「木」の連作の鑑賞を通して彼の意図の発見へとつなげようとする授業を構築した。約140名の中学3年生を対象に教師と生徒の対話を中心とする授業を展開した結果,抽象絵画の鑑賞に発見学習を取り入れることの教育的有効性が確認された。大半の生徒は「木」の連作の鑑賞によって,作家の意図について予想を成立あるいは深化させていたことが明らかとなった。また,作品や作家のみならず,抽象絵画に対する見方や考え方も深めていたことが示された。