2022 年 54 巻 1 号 p. 249-256
ヴュルテンベルク国立美術工芸学校は,ヴュルテンベルクの美術工業の振興と工業製品の質の向上のために,1869年シュトゥットガルトに設立された。本論では,1869年から1902年までの同校の教育組織や教育内容,生徒数や教育の成果を,その年次報告書等により検討した。設立から10年程経過した頃には,ヴュルテンベルクの産業界からの需要を反映し,家具工業の専門課程が同校の中心となった。1902年までに,同校では 1年間の予備課程に続き,2年間の専門課程において実技と講義の授業が行われた。加えて,実践における課題解決が重視され,同校では毎年専攻ごとに懸賞課題が出された。また,本稿では,同校は家具工業と関連する美術工業に関する専門課程で多くの生徒を教育する一方,図画教員のための専門課程にも多くの生徒を集め,図画教員になるための学士試験の合格者を,他の専門領域の合格者よりも多く輩出していたことも明らかにした。