美術教育学研究
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1920–1960年代における福田豊四郎の岩絵具による表現手法
―粒子径の違いに着目して―
日野 沙耶
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2022 年 54 巻 1 号 p. 257-264

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抄録

戦前から戦後は日本画表現の過渡期であり,近代以降開発が進んだ岩絵具による表現手法も変化した。しかし,具体的な内容はこれまで明らかにされていない。そこで本稿では,日本画表現の過渡期における岩絵具の表現手法について,その具体例を示すことを目的として,日本画家の福田豊四郎の1920–1960年代の作品に着目し,文献調査および作品の実見調査を行った。文献調査から,豊四郎が岩絵具を強い色彩効果のために利用していたことが分かった。実見調査からは,岩絵具の粒子径を大まかに細口,中口,荒口として,1932年までは主に細口の岩絵具を用いた彩色表現が行われていたが,徐々に荒口や中口の粗さを利用した質感表現や彩色表現,マティエール表現が試されるようになったことが窺えた。これらの表現は制作時期と関わっており,豊四郎が時代の影響を受けながら岩絵具による表現を追求していたことが明らかになった。

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