本論では,美術への興味関心の有無や苦手意識を感じる多様な子ども達を対象に学校教育の場でのワークショップ実践の可能性を実践研究する。第1節-1では,美術領域における活動をアート・ワークショップ(Art workshop)とし,ワークショップ(Workshop)と区別した。ワークショップでは参加者の参加・体験が前提にあり,双方向的な対話や,集団から生まれる創造性を重視していた。日本のアート・ワークショップでも参加者に寄り添い,共に対話や共感を通して活動が行われていることを示した。第1節-3では,新学習指導要領から,「主体的・対話的で深い学び」についてワークショップとの関連を示した。美術教育からは,子ども達の主体性や,活動中の行為に注目した「造形遊び」を実践の重要な視点に位置付けた。第2節~4節では,学校教育の場で三つのアート・ワークショップを実践した。実践からは,児童生徒の活動への意欲的な参加と,体験をする中での双方向的な対話や協同が確認された。