本研究は,細田高広の開発したインサイト型ストーリーのフレームワークを活用した実践研究で得られた結果の分析を基に,問題発見力を育成するための手立てとして有効に機能したのかについて考察した。まず,問題発見力について,デザイン思考のダブルダイヤモンド・モデルとの関連性と先行研究などを基に考察し,デザイン教育において問題発見力を育成する意義について明らかにした。次に,細田のインサイト型ストーリーの構造について概観し,課題を定義するまでのデザインプロセスの重要性について整理した。実践研究は,フィールドでのデザインリサーチを通し,インサイト型ストーリーのフレームワークを活用してコンセプト立案を行った。その結果,インサイト型ストーリーのフレームワークは創造的な「問い」を生むための有効な手立てであることが展望された。