抄録
コア・カリキュラムにむけて検討する中で母性看護学の主要概念である母性について一考した.母性という概念には様々な解釈と歴史がある.母性に関する言説の変遷とテキスト分析から問題を明確化し,バーンスティンの概念枠組みを参考に言説を構造的に分析した.女性のアイデンティティの形成に母性という言説は,ひとつの象徴としてあったと考えられ,国策として推進された側面があり,母性に関する言説は,絶対的な言説ではなく,権力関係の中で様々に編成され再生産されたこと,内容に変更があったとしても言説としてあり続けることがわかった.そして,言説は役割行動の意識形成をし,在り方を統制し,枠づけを行っていったと考えられる.母性看護学は,言説を,知識としてではなく時代の要請より変化する概念として構造的に理解・認識し,様々な場面で人々の状況を観察・判断し,状況に応じた適切な対応ができる看護実践能力を修得することを目指す.