抄録
エントロピーの性質である,移動性,発生性,非消滅性から,エントロピーは熱の量であると考えるのが妥当である.内部エネルギーの変化のさせかたには,熱の量,物質がしめる空間の量,そして物質の量などを変化させる方法がある.高温の物質から低温の物質への熱の移動と,低圧の物質から高圧の物質への空間の移動と,高化学ポテンシャルの物質から低化学ポテンシャルの物質への物質の移動および化学反応となどは自然の傾向に従った変化であり,これらの逆の変化は自然の傾向に逆らった変化である.自然の傾向に従った変化であまったエネルギーの一部もしくは全部を,自然の傾向に逆らった変化をおこすために利用しそこねたときに,熱すなわちエントロピーが発生する.