抄録
タッピングタッチは指先を使って左右交互にタッチするケアの技法であり,心理的効果,身体的効果,人間関係に対する効果があると言われている。本研究は,タッピングタッチによる認知症の行動・心理的な周辺症状に対する変化を検討した。認知症の周辺症状である幻覚や抑うつが現れている高齢女性に対して,タッピングタッチを10分間,4日おきに3回実施した。その結果,初回介入後から幻覚が消失し,抑うつ傾向の改善や疎通性の向上が見られた。以上から,タッピングタッチは認知症の周辺症状の一部に対して有用であると考えられた。しかし,本事例は単一事例の検討であるため,一般化することはできない。今後,認知症の周辺症状に対するタッピングタッチの有用性を検討するために,複数の事例での検討が必要である。