2021 年 1 巻 4 号 p. 11-20
本稿は、文化経済学の視点から伝統工芸をクリエイティブ産業と捉え、刃物産業を事例に持続可能な経済と文化の関係を考察したものである。播州三木打刃物、播州刃物、越前打刃物の3つの産地の事例から、(1)事業所・職人を超えた後継者育成がなされ、産地内の横のつながりが働きやすさや新しい活動につながっていること、(2)海外展開が職人の技の価値に気づく機会になっていることが明らかとなった。これにより、後継者育成、海外展開の双方における、技という無形のコンテンツ、技の文化的価値の重要性を示した。一部の産地では、過去の技の研究や再現といった技の文化的価値を追求する活動も生まれており、このような取り組みが新しい製品を生み出す創造の源泉となり、商標等と結びついて経済的価値を生み、観光等の新たなサービスを生み出す可能性をもつことを提示した。