本稿は本学会が主たる研究対象としているアジア経済についてその持続可能性について検討したものである。アジア経済が持続的な発展を遂げるためには、何よりもまず平和で安定的な国内・国際環境を必須とする。しかしながら、アジアでは中国におけるウイグル自治区、香港、台湾などをめぐる内政問題、東・南シナ海への海洋進出、北朝鮮の度重なるミサイル発射、ミャンマーの軍事クーデターさらにアフガニスタンにおけるタリバンによる政権奪取などが生じており、同地域をきわめて不安定化させている。これらの問題は展開次第ではアジア経済の持続性を損なう可能性がある。
経済についてみよう。中国経済が改革開放に転じて以来ほぼ30年にわたって高度成長を持続させた。2010年にはGDPで日本を追い抜いて世界第2位の経済大国になり、そしてアジア経済の中心に躍りでた。また、アジアでは経済面の統合も進んだことにより各国経済は緊密に結びついている。その結果中国経済の動向がアジア全体に大きな影響を及ぼすようになっている。その中国が格差是正のためにとった政策による不況や少子高齢化などにより成長力が落ちてきている。
本稿はこれらの二つの要因につきアジア経済の持続可能性を検討したものである。
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