都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
研究ノート
中心市街地における学生参加によるまちづくりの取り組み
―大阪府八尾市を事例に―
安倉 良二
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2017 年 12 巻 p. 84-98

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抄録

本研究は,大阪府八尾市を事例に,大学のキャンパス新設を契機に中心市街地で行われているまちづくりの取り組みが商店街の振興に果たす役割について,学生参加による実践の分析から明らかにした. 八尾市の中心市街地では,大型店の跡地に大阪経済法科大学がキャンパスを新設した2012 年以降,同大学の学生が商店街のまちづくりに関わるようになった.その内容は,イベントのスタッフを体験するものと情報誌を刊行するものに分けられる.前者において,学生はイベントの企画運営をはじめ,写真撮影や安全誘導といった補助活動に取り組んでおり,イベントを実行する上で不可欠な存在になっている.他方,後者では,中心市街地にある店舗の紹介記事を書くことで経法大の学生と八尾市民に中心市街地の魅力をアピールしている. このように,経法大の学生参加によるまちづくりでは,それぞれの目的に応じた実践が行われており,商店街の振興に大きな役割を果たしていることがわかった.以上のまちづくりを主導するアクターとして,イベントの企画段階から学生を積極的に活用した北本町中央通商店会の会長と,学生参加のまちづくりに対して財政的な支援を続けた八尾市役所があげられる.両者は,既存の商店街組織による中心市街地のまちづくりが行き詰まる中,経法大のキャンパス新設を契機に,学生をまちづくりの担い手とすることで商店街の振興をめぐる新たな方向性を模索していたと考えられる.

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© 2017 日本都市地理学会
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