2019 年 14 巻 p. 16-27
本稿は,日本最大のゲイバー集積地である新宿二丁目を対象として,ゲイ・ディストリクトの発達モデルを参照しながら,ゲイ・ディストリクトの空間的特徴と存続条件を検討した.ゲイバーの立地傾向の分析,ゲイバー経営者やテナント供給者への聞き取り調査の結果,新宿二丁目では,ゲイバーの経営方針によって店舗の立地に差異がみられ,コストを抑えるリース店舗の存在やカミングアウトの軽減,物件供給に携わるキーパーソンの存在によって維持されている一方で,ゲイ・ディストリクトの消失につながる地域住民との緊張関係も潜在的に存在していることが明らかになった.ゲイ・ディストリクトとしての新宿二丁目は,発達モデルおよびそのモデルに対する批判的論文において示された特徴を部分的に有しており,このことは各都市のゲイ・ディストリクトをより広い枠組みで解釈する必要があることを示唆している.