都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
大阪市城東区蒲生4丁目界隈における起業家による長屋の再生利用と地域への影響
奥野 聡子
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2020 年 15 巻 p. 100-109

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抄録

インナーシティでは住民の高齢化,住宅の老朽化が進み,空き家や空閑地が増加してきたため,その再生利用が重要な課題となっている.大阪市城東区蒲生4丁目界隈では,空き家となった木造長屋を飲食店へとコンバージョンする再生活動が進められてきた.

本稿では,蒲生4丁目界隈での空き家・空閑地の実態を調査・分析し,起業家による再生活動が進展してきた過程について検証した.また,再生活動が誘因となった,大企業資本によるチェーン店の増加と,近隣商店が減少したことを明らかにした.

当地区は新たな商業集積により再活性化する一方で,近隣に高層共同住宅が建設されたり,増加するチェーン店の原色の看板が設置されたりと,低層の住宅地景観との不調和がみられる.さらに,住宅地に酒類を提供する店が増え,酔客によるトラブルやごみの散乱,近隣商店の立ち退きなど,住民の生活環境への影響が表出してきたことを示した.

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© 2020 日本都市地理学会
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