都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
社会主義後のブダペストにおけるツーリズムジェントリフィケーション
藤塚 吉浩
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2020 年 15 巻 p. 91-99

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抄録

本稿では,社会主義後のブダペストにおけるツーリズムジェントリフィケーションの影響について検討 した.第二次世界大戦後,社会主義をとったハンガリーでは,住宅は接収され再配分された.社会主義体制下のブダペストでは,インナーシティの住宅は十分な管理が行われずに衰微した.1960 年代後半には住宅の所有が認められるようになり,1980 年代に大規模な修復が行われた街区では,若い知識階級が来住した. 社会主義体制後には,政府所有の住宅を居住者に安価で売却する,住宅の私有化が行われた.状態の悪い住戸の多いVII 区では,住宅の私有化は進まず,大半が政府所有のままで残った.老朽化した建物を再利用する廃墟バーが2004 年に始まったが,退廃的な雰囲気の中でアートの場としても注目を浴びた.廃墟バーは人気を博し, 2010 年代には国外から多くの観光客が訪れるようになった.夜間の廃墟バー周辺の騒音に悩まされる地域住民は,居場所を脅かされており,夜間のツーリズムの拡大がジェントリフィケーションを惹起したのである.

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© 2020 日本都市地理学会
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