都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
スマートシティ政策を通した先端技術普及における地域のユーザーの役割
横浜市を事例として
本多 広樹
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2020 年 15 巻 p. 59-75

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抄録

本稿は,スマートシティ政策における先端技術のユーザー,特に地域のユーザーの役割を明らかにすることを目的とした.そして,研究の枠組みとして,空間スケール,ユーザー,普及プロセスの3 つの軸を設定し,これらを組み合わせて分析および考察を行った.横浜市は,「次世代エネルギー・社会システム実証事業」の対象地域に国によって選定され,さまざまな取組みを実施してきた.その中では,HEMS(家庭用エネルギーマネジメントシステム)をはじめとした先端技術の普及が計画され,実証事業の期間中に企業や個人のユーザーが増加し,計画はほぼ達成された.HEMS の普及には,各ユーザーが従来有していたネットワークや,実証事業によって新たに生じたネットワークが影響していた.特に地元地域のユーザーは独自のネットワークを有し,スマートシティ政策を行う行政や中核企業とは異なる別の地域へ先端技術を普及させていた.実証事業の終了後は,行政や中核企業からの働きかけは弱体化した一面もある.しかし,その後も実証事業中の知見を活かし,HEMS の新たな活用方法を考案,実践する地域のユーザーが存在することも明らかになった.

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© 2020 日本都市地理学会
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