富山大学医学会誌
Online ISSN : 2758-819X
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就任講演
看護におけるSpiritual-Care Model
比嘉 勇人
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キーワード: spirituality, spiritual care,, nursing
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2011 年 21 巻 1 号 p. 16-22

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抄録
 日本の医療現場で“spiritual care”が注目され始めたのは,1993年に『がんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア』が翻訳出版されたころからである。1990年代,“spiritual care”は宗教的ケアと理解されることが多く,終末期患者への特別なケアとして限定的に受け取られていた。“spiritual”という用語の理解については,使用する立場によってその意味内容が異なるため,あえて和訳せずに「スピリチュアル」と表記されることが多い。そのため,看護の臨床現場,教育,研究等においては,多様な「スピリチュアル」概念がみられる。
 そこで,ここでは“spiritual”な次元について多層構造を想定し,個人を超える包括的または絶対的なspiritualは【霊的】と表記し,個人の内面にある私的または相対的なspiritualは【神気的】と表記することを提案した。この2層化に伴い,【霊性】は「個人や集団の宗教性,道徳性,習俗性,神秘性などを包含する超越的なつながり性」と定義し,【神気性】は「自分自身および自分以外との非物質的な結びつきを志向する内発的なつながり性」と定義した。
 以上を基に,看護を受けるニーズをもつすべての人々を対象としたSpiritual−Care Modelを作成し,「看護者が日常的に支援するのは患者の私的/相対的な神気的次元であり,患者の包括的/絶対的な霊的次元への支援については聖職者との協働支援を検討する」ことを提言した。
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© 2010 富山大学医学会
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