富山大学医学会誌
Online ISSN : 2758-819X
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ORIGINAL ARTICLE
  • 福田 正治
    2014 年 24 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     海馬体の層構造仮説を検証するために麻酔下および覚醒下ラットの海馬体CA1複雑型自発ニューロン活動を記録した。CA1ニューロンの自発活動は内側-外側方向では2.0mmの距離まで相関関係があった。規格化された相関係数は麻酔下および覚醒下ラットの両方の海馬体の内側-外側方向で一様であった。同様な一様な相関係数の分布が吻側-尾側方向1.6mmの距離まで観測された。これらの結果は海馬体CA1ニューロンの自発放電は弱くて一様な機能的結合性の分布を示し,層構造から予想される結合性を示さないことが示唆された。
  • 増田 達, 山崎 光章, 福田 正治
    2014 年 24 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     ラットの両側総頸動脈永久結紮モデルは,脳低灌流をきたす実験モデルであり,認識異常を伴い,アルツハイマー病のモデルともされている。このモデルに関しては,海馬や大脳皮質,白質に病理学的な変化が報告されており,また代謝異常や,視覚系の障害も知られている。行動に関しては,空間認知の異常が報告されており,海馬の障害を示唆する。しかし,これまでに扁桃体の関与は報告されていない。最近,海馬と扁桃体が相互に影響し合う密接な関連が注目されており,このモデルでも,扁桃体の障害が起きているのではないかと考えた。それで,このモデルに関する行動上の異常と扁桃体の関与を調べる目的で,水迷路,驚愕実験,プレパルス抑制の3種類の実験手法を適用した。その結果,海馬の障害を示唆する水迷路の異常と同時に,扁桃体の障害を示唆する驚愕実験の異常も見られた。結論として,本脳低灌流モデルにおいても,海馬と扁桃体が相互に影響し合っている可能性が示された。
総説
  • ―富山大学附属病院における取り組みを振り返って―
    金森 昌彦, 高嶋 修太郎, 栗本 昌紀, 野口 京, 安田 剛敏
    2014 年 24 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     脊椎脊髄疾患領域は最も学際的な領域であり,その診断に携わる代表的な診療科は神経内科,放射線科,脳神経外科,整形外科の4診療科である。これらの診療科において最も基本となる共通の診断ツールはmagnetic resonance imaging(MRI)を中心とする画像診断であるが,その読影には各診療科に考え方の差があると感じられる。そこで富山大学附属病院では各診療科の立場の特徴を生かしながら,少しでも相互の理解を図るための努力をこの8年間にわたって行ってきた。神経内科―脳神経外科,神経内科―整形外科のカンファランスを行うようになったほか,関連4診療科が中心となり,富山脊椎脊髄画像診断研究会を立ち上げ,合計8回の研究会を開催してきた。
     今後はより良い診断システムの構築のために,診療科の枠を越えて協同して診断治療を行う体制を構築しておく必要ある。さらに,この診療科連携を充実させるには脊椎脊髄疾患に対する概念の差と共通認識を学べる研修医教育システムの構築が望ましい。
原著
  • 上野 照子, トラン H アン, 田村 了以, 小野 武年, 西条 寿夫
    2014 年 24 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     胎生期ストレスを受けた出生児では,統合失調症や自閉症などの脳発達障害の発症リスクが増大することが示唆されている。本研究では,神経系の発達に対する胎生期慢性ストレスの影響を明らかにする目的で,胎生期に反復寒冷ストレスを負荷した仔ラットを用い,1)脳を含む各種臓器の発達に及ぼす胎生期ストレス負荷(胎生期における反復寒冷ストレス負荷)の影響,2)大脳辺縁系(前部帯状回)の解剖学的発達ならびに運動機能の発達に及ぼす胎生期ストレス負荷の影響,3)脳内自己刺激(ICSS)を用いた場所学習課行動に対する胎生期ストレスの影響を調べた。その結果,妊娠中にストレス(胎生期ストレス)を負荷した母獣より出生した仔ラットでは対照ラットと比較して,1)出生後8日目の体重,脳,胸腺,脾臓,および腎臓の絶対湿重量が有意に小さい,2)前部帯状回の大きさが有意に小さく,運動機能の発達が遅延する,3)学習行動中に突然行動を休止する行動異常(行動の途絶)が認められることなどが明らかになった。これらの結果から,胎生期ストレスによる脳発達障害の発症リスク増大に前部帯状回が関与している可能性が示唆された。
  • 森尻 実, 神前 祐一, 野口 京
    2014 年 24 巻 1 号 p. 24-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     びまん性腎疾患それぞれの長径(縦径)・短径(横径)・腎実質の厚さ(前後径)をMDCT再構成冠状断像から測定し評価することが目的である。腎生検前の評価を目的とした上腹部あるいは肝~骨盤CTが撮像された。再構成横断像は6mm厚で再構成冠状断像は4mm厚であった。特に我々は再構成冠状断像を利用した。生検の結果あるいは電子カルテを利用した病歴からびまん性腎疾患群を急性びまん性腎疾患と慢性びまん性腎疾患とに分類した。それぞれの疾患のMDCTから測定した長径(縦径)・短径(横径)・腎実質の厚さ(前後径)について評価した。急性びまん性腎疾患群では長径(縦径)・短径(横径)・腎実質の厚さ(前後径)について<正常値・正常値・>正常値の間で分布にばらつきが多く一定の傾向は見られなかった。慢性びまん性腎疾患群では長径(縦径)・短径(横径)・腎実質の厚さ(前後径)について正常値より小さい値に多く分布していた。一定の方向性が示唆される。MDCTは再構成像から腎の長径(縦径)・短径(横径)・実質厚(前後径)を測定することによって慢性びまん性腎疾患を評価できる可能性がある。一方,急性びまん性腎疾患については我々の研究における各種測定値のみでは評価することが困難である。
  • 奥寺 敬, 坂本 美重
    2014 年 24 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     International medical cooperation project for State of Libya is reported. The concept of this project is to treat Libyan injured people using international medical tourism system in Thailand. Management of patient, including evaluation, domestic and international transportation arrangement of hospital, is supported by Normeca International Co., Ltd, (Pattaya, Thailand). Treatment of Libyan patient in two international hospitals (Bangpakok 9 Hospital and Navamin 9 Hopsital) in Bangkok was successful. However, continuity of project is uncertain due to unstable political condition in State of Libya and Thailand.
  • ―入力ツールからClinical Decision Making Supporting Toolへのパラダイムシフト―
    中川 肇
    2014 年 24 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     電子カルテシステムには膨大なデータが蓄積されている。このデータは,現状では診療の質の向上のために十分,利活用できているかどうかについて,一定の見解はない。このため,富山大学附属病院で導入してきた電子カルテデータからの臨床意思決定を支援するナレッジについて,医療辞書生成機能を通じてその利点を考察し,さらに,電子カルテシステムは,今後は,記録ツールから診療の質向上のため,リスクマネジメントのための臨床意思決定支援,さらには研究・教育支援へのパラダイムシフトが必要であることについても言及する。
  • ―インシデント集計より―
    野上 悦子, 安宅 早苗, 奥寺 敬, 安村 修, 塚田 一博
    2014 年 24 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     富山大学附属病院では,インシデントレポートを集計し医療安全上の事象に関して様々な分析を行っている。報告概要は,インシデント報告数と発生率,職種別報告,年度内での月別報告,インシデント分類別報告数,患者影響レベルとインシデント報告数,事例発生場所,職種経験年数・部署経験年数別報告として集計した。インシデントそのものの動向としては,関連する医療上の事象として,治療・看護計画の説明・指導,食事,与薬・処方,注射・点滴,ルートトラブル,輸血,検査,処置・治療,麻酔,手術,転倒・転落,診療情報,医療機器,離院・離棟,調剤・調整,苦情などにつき検討を行った。
症例報告
学会報告
  • 辻岡 和孝, 中川 肇
    2014 年 24 巻 1 号 p. 61-63
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     日本医療情報学会春季学術大会(シンポジウム2013 in Toyama)が大会長の中川肇教授の下,富山国際会議場で平成25年6月20日から22日の3日間に亘って開催された。メインテーマは,「医療情報の先用後利を考える」と,富山の家庭薬業界の言葉を電子カルテの現状に合わせた富山らしいテーマとした。富山では江戸時代より既に掛場帳と呼ばれる顧客台帳を構築しており,その内容は顧客や家族の健康状態などが把握できるものであり,現代のPHRに繋がるものである。電子カルテには膨大なデータが格納されており,そこから診療支援に役立てるナレッジベースが構築できつつある。特別講演ではビッグデータに詳しい弁護士の牧野二郎先生をお迎えし,今後の医療情報の活用について御講演頂いた。教育講演2題,一般口演4題,ポスター38題の出題があり,悪天候にも関わらず,大会過去最高の1113名の参加者を賜ることができた。
総説
原著
  • 渡辺 史子, 川渕 奈三栄, 中垣内 浩子, 三浦 太郎, 黒岩 麻衣子, 小浦 友行, 吉田 樹一郎, 北 啓一朗, 小林 直子, 室林 ...
    2014 年 24 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     今回,富山県で初めて家庭医療専門医が3名誕生した。そのうちの1人として,後期研修医主体で長野県における家庭医療後期研修のプログラム運営を行った経緯を提示する。このことは成人学習理論の観点においては自己主導型学習を行ったと考えられる。このようなことを可能とした背景を考察したところ,外部講師の招聘に対する病院の理解,地域に根ざした医療,多職種連携のしやすい環境が考えられる。指導医との共同作業を経てつくられるポートフォリオは後期研修医の自己評価のツールとして有用であり,医療者の生涯学習にも役立つと考えられる。
  • 三浦 太郎, 川渕 奈三栄, 渡辺 史子, 中垣内 浩子, 黒岩 麻衣子, 小浦 友行, 吉田 樹一郎, 北 啓一朗, 小林 直子, Shi ...
    2014 年 24 巻 1 号 p. 76-78
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     この度富山県で初めて日本プライマリケア連合学会認定家庭医療専門医が3名誕生した。農村・離島での医師を目指して家庭医療専門医を取得した自分自身の経験を示し,これまでのへき地・離島医療の問題点と,それに対する家庭医療専門医制度の可能性を考察する。
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