植生学会誌
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原著論文
水田周辺の湿性植生が代かきによって流出した懸濁物質を捕捉する機能
池田 浩明原田 直國西村 誠一伊藤 一幸
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2004 年 20 巻 2 号 p. 111-117

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抄録

  1.茨城県つくば市周辺において,水田に隣接する湿性植生(休耕田・排水路)11調査地を対象として,2002年の代かき作業期に水田から流出する懸濁物質(SS)の調査を実施した.
  2.調査地の植生は,除歪対応分析(DCA)による序列化と優占種によってアシカキ群落,イヌスギナ群落,セリ群落,トダシバ-チゴザサ群落の4タイプに区分された.
  3.代かき水に含まれるSSは,重量割合で46-98%(平均で72%)が湿性植生によって捕捉された.
  4.SS捕捉率は,湿地の植被率・植生高・植生量(=植被率(%)×植生高(m))と正の相関を示し,相関係数は植生量で最も高かった.SS捕捉率は,植生量が大きくなるにつれて直線的に増加し,植生量が80以上では95%程度の捕捉率を示した.
  5.SS捕捉率は,高頻度で出現した7種のうち,セイタイカアワダチソウの被度と正の相関を示したが,アシカキ,アメリカセンダングサ,イヌスギナ,イボクサ,スズメノテッポウ,セリの被度とは無相関だった.また,調査地のDCA第1・第2軸スコアとも無相関であり,4植生タイプ間におけるSS捕捉率の差も検出されなかった.
  6.代かき水に含まれるSSは,粒径が10-30μmのものが最も多く,湿性植生は粒径が30μm以下の小さな土壌粒子をよく捕捉した.
  7.これらの結果から,湿性植生は水田から流出したSSを捕捉する機能を持ち,その機能は植生量が豊富な湿地で向上することが示唆された.

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