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植生学会誌
Vol. 23 (2006) No. 2 p. 105-117

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http://doi.org/10.15031/vegsci.23.105

原著論文

  1. 鬼怒川源流部の山地帯と亜高山帯の移行部に成立している原生状態の針広混交林の種組成,構成種のサイズ構造および更新特性を,標高的に上下に位置する森林と比較した.これらにもとづいて,この地域の針広混交林が,本州の他地域の針広混交林の中で植生地理学的にどのように位置づけられるかについて検討した.
  2. 手白山北西斜面の標高1340-1780mの範囲において,ブナ-トチノキ林,ウラジロモミ-シウリザクラ林,トウヒ-コメツガ林およびコメツガ-クロベ林に方形区を設定して,樹高1.3m以上の樹木の種名,胸高直径,樹高を測定した.樹高1.3m未満の樹木に関しては方形区内に稚樹調査枠(2×2m)を設定して樹種と高さを記録した.
  3. ウラジロモミは全ての林分に出現したが,ウラジロモミ-シウリザクラ林での胸高断面積合計比が最も高かった.シウリザクラはブナ-トチノキ林,ウラジロモミ-シウリザクラ林,トウヒ-コメツガ林に出現したが,ウラジロモミ-シウリザクラ林での胸高断面積合計比が最も高かった.
  4. ウラジロモミ-シウリザクラ林とトウヒ-コメツガ林は群落高が35-40mと高かった.幹直径-樹高関係から針葉樹と落葉広葉樹の最大樹高を推定したところ,ウラジロモミ-シウリザクラ林とトウヒ-コメツガ林では針葉樹の樹高が落葉広葉樹よりも高かった.
  5. ウラジロモミ-シウリザクラ林とトウヒ-コメツガ林は,樹高の高い針葉樹(ウラジロモミ,トウヒ)が上層を占め,その下層に落葉広葉樹が配置されるという点で北海道の針広混交林と構造的な類似性が認められた.
  6. ウラジロモミ-シウリザクラ林では,優占種のウラジロモミは,不連続なサイズ構造であった.ウラジロモミは,台風などに起因する大規模な攪乱が更新の機会になっている可能性があると考えられた.
  7. 奥鬼怒地域のウラジロモミ-シウリザクラ林およびトウヒ-コメツガ林は,本州の八ヶ岳や上高地にみられる針広混交林と種組成に共通性があり,上部温帯林と捉えることができた.

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