植生学会誌
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原著論文
静岡県遠州灘海岸における海浜植物5種の実生の発生と定着
岡 浩平吉崎 真司小堀 洋美
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2009 年 26 巻 1 号 p. 9-20

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抄録

  1. 海浜植物の個体群の維持・拡大における種子繁殖の役割を明らかにするために,静岡県遠州灘海岸において多年生の海浜植物5種の実生の発生と生存について調査を行った.
  2. コウボウムギは,前砂丘後背の打ち上げ帯において実生の定着が高密度で確認された.打ち上げ帯の漂着物は,土壌中の主要な栄養塩であるN-NO_3^-を上昇させる効果があり,コウボウムギ実生の生長に影響していると考えられた.また,コウボウムギは,打ち上げ帯によって裸地部に個体群を拡大していたと考えられた.
  3. コウボウムギとハマヒルガオ,ハマニガナの3種は,前砂丘内において実生の発生密度や生存率に関係なく,成個体の優占度が比較的高かった.また,実生の定着は,前砂丘内のくぼ地など限られた立地で起きていた.この3種は,横走地下茎によって個体群を拡大できることから,前砂丘内では個体群の維持・拡大において種子繁殖よりも栄養繁殖に依存していると考えられた.
  4. ケカモノハシとビロードテンツキは,前砂丘内の成個体が生育している微地形において,実生の定着が高密度で確認された.この2種は,横走地下茎によって個体群を拡大することが困難なため,前砂丘では個体群の維持・拡大において栄養繁殖よりも種子繁殖に依存していると考えられた.
  5. 前砂丘内において,個体群の維持・拡大のための種子繁殖への依存度は,海浜植物によって異なると考えられた.また,実生の定着特性は,打ち上げ帯と前砂丘,さらに前砂丘内の微地形によって異なると考えられた.

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