2020 年 37 巻 2 号 p. 117-125
1. 海浜植物イソスミレの汀線-内陸傾度における出現位置と本種の生育する海浜植生の成帯構造を明らかにするために,各地の砂質海岸でベルトトランセクト調査を行った.
2. 調査地の海浜植生は植被の疎らな打ち上げ帯,ハマヒルガオ,コウボウムギ,ハマボウフウなど草本性の海浜植物から構成される草本帯,ハマゴウ,ハマナスなど木本性の海浜植物が優占する矮低木帯,アキグミなど木本性の内陸植物が中心となる低木帯に区分された.
3. イソスミレは打ち上げ帯,草本帯の前部,低木帯にはほとんど出現せず,草本帯の後部から矮低木帯を中心的なハビタットとしていた.出現位置の幅は草本帯や矮低木帯の主な優占種であるハマヒルガオ,コウボウムギ,ハマボウフウ,ハマゴウなどのそれと比較すると狭い傾向にあった.
4. ハビタットがやや内陸側に位置し,かつ限定的であったことから,イソスミレは海浜植物の中でも開発により失われやすい種であり,その保全に向けては砂浜・砂丘域の縮小を避けることが極めて重要と考えられた.